ある日
おなかいたい
おなかいたいよ
冷えたみたい
おなかいたいよ
温めたい
今すぐに温めたい
内側だからお白湯を飲みたい
湯たんぽかカイロが欲しい
おかあさん
電話するけど出ない
携帯電話を携帯しない
おなかいたい
諦めて自分で何とかしようと
波がひいた隙にリビングへ行く
階段をおりるのも辛い
自分でお湯を沸かす
おなかいたい
また波がきた
いたい
いたい
いたい
いたいよ
おかあさんが帰ってきた
湯たんぽかカイロない?
おなかいたいよ
カイロあるよって出してくれた
ああよかった
これで温かくなる
って思ったのも束の間
ハイって渡してくれたのは
冷えきったカイロ貼るタイプ
いたい
今すぐに温めたい
「カイロを衣類に貼ったら温かくなるって書いてある」
そうじゃなくて…温めてから渡してよ
冷たいカイロ貼って当てたら
またいたいじゃない
言葉を飲み込む
ベッドに戻って冷たいカイロを温めようとする
いたみに耐えながら
わたしを温めてくれるはずのカイロを
わたしが温める
揉みすぎて破れる
おかあさん
今度は携帯にでた
あのカイロ温かくならない
コンビニでかってきて
電話から5分
カイロを買ってきてくれたけど
また貼るやつ
また冷たいまま渡される
貼るやつは貼らないと温かくならない
冷たいから貼りたくない
他の場所に貼って温めることも
くっついて鬱陶しい
そんなことよりも
いたい
いたい
いたいよ
今すぐに温めたいんだよ
この手の中にカイロはあるのに
温かくはならない
温かくするために貼らなくちゃいけない
冷たいから体につく場所に貼りたくない
そうじゃなくて
そもそもなんで貼るタイプ
カイロの粘着にイライラして投げ捨てる
貼らないやつが欲しいんだよ
なんでわかんないの
おかあさんのバカ
涙と大声が出る
貼らないやつね
すぐ買ってくるからね
急いでまたコンビニへ行くおかあさん
言わなくちゃわからない
おかあさんにはあたしがどれだけ痛いのかわからない
今すぐに温かいカイロが欲しいのがわからない
【貼らないカイロ】を買ってきて
と言わないとわからない
【温めてから渡して】
と言わないとわからない
1から10まで言わないとわからない
ADHDの相手をするというのはそういうこと
元夫もあたしと生活するのは
さぞかし大変だっただろう
いたい
いたい
いたい
おかあさんのバカ
おかあさんごめん
あたしのバカ
元夫ごめん
今度はおとうさんがカイロを持ってきた
おかあさん、そこで転んじゃったよ
あたしの癇癪に焦ったおかあさん
カイロを買いに行こうとして
玄関先で転んじゃった
おかあさんごめんなさい
1から10まで言わないとわからないけど
一生懸命なおかあさん
あたしはバカって酷いことを言った
渡されるのはやっぱり冷たいカイロ
おとうさんもわからない
今度は貼らないカイロ
冷たいけど貼らなくていい
ポケットにいれてすぐ温まる
やっとお腹に暖かいカイロをあてる
もし元夫だったらこんな時
お腹いたい
冷えたみたい
それだけ言うだけで
温かいカイロを与えてくれた
元夫があたしを捨てたい気持ちが身に沁みて解った気がした
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